COLUMNCOLUMNグーフィ森の『Single Speaker』

Single Speaker Vol.7 「音楽っていったいどうなっちゃうの!?」 

2014-01-20

新年第一弾のコラムは、最近様々な人からからよく訊かれる質問を考えてみたいと思います。

「音楽ってこの先いったいどうなっちゃうの?」
レコードからCDへ、CDから配信へ、そしてネットのクラウドサービス等を使ったストリーミングによるオンデマンドの定額で安価な音楽配信へと、音楽ソフトの提供は目まぐるしく変化してきました。ボクが病に倒れてから早5年、エンタテイメントの世界はその間に大きく様変わりしました。世の中は音楽で溢れているのにCDセールスは落ち込む一方。ヨーロッパに至ってはCDの製作も中止されてしまいました。また音楽ソフト配信もCDに取って代わると思われていましたが、昨年からは遂にその需要も下降線を辿っています。かと思えば、新たにハイクオリティの音楽配信が始まって注目されたり、また欧米ではアナログレコードがえらく人気となってきています。まぁ、どちらも一過性のマニアックなトレンドだったり、レトロブームの様な気もしますが。音楽が何処へ行くのかはボクが教えてもらいたいくらいです(笑)。

この話題を考えると2000年を思い出します。その年は福山雅治くんと『桜坂』を発表しました。そして嬉しいことにダブルミリオンの売り上げを記録し、レコード会社から“音楽配信普及の救世主か?”と言われていました。21世紀は音楽は配信により提供されるだろうとレコード業界では囁かれていたからです。しかし日本の音楽業界では音楽配信の普及に悪戦苦闘していました。なぜならアーティストをはじめとする多くの音楽制作者が配信に反対の姿勢を強く打ち出していたからです。そこで『「桜坂」をなんとか配信できないだろうか?』とレコード会社の上層部がボクに擦り寄ってきました(笑)。そりゃそうです、ダブルミリオンを超える大ヒット曲が音楽配信に乗っかることになれば音楽配信の普及に大きな弾みをつけられるだろうというのがメーカーの目論みでした。でもボクは「しません!! 配信は絶対にしません!」の一点張り。すると「音楽配信に反対する人たちはみんな音質が悪いから反対っていうけれど、グーフィもそうなの?」と関係者に問いただされました。確かに音楽配信反対者の多くは音質の劣化を問題視していたのは事実です。当時音楽配信はCDの音のクオリティの半分にも及ばないのが現実でしたから、多くの制作者の反対もわからないではないとボクも考えていました。でもボクの反対理由は音質の劣化ではなかったのです。問題は二つありました。一つは著作権の保護が確定されていなかったこと。二つ目はこれが反対の大きな理由だったのですが、今後ネットは更に発達しますますパッケージ(CDなど)の販売を脅かし音楽産業そのものを衰退させる危険性を持っている、と考えていたからなのです。ボクの悪い予感は的中しました。その後、ネットはますます発達し配信を通り越してストリーミングのオンデマンドへ。もはやパッケージ(CDなど)は衰退の一途です。

昨年のクリスマス・イブに山下達郎さんのコンサートへ出掛けました。体調が芳しくない中での観賞でしたが、音楽職人である達郎さんの素晴らしいライブからたくさんの元気をもらい、“音楽の力”を再認識しました。達郎さんが以前に言っていたことですが「音楽のデジタル化とスマホなどを中心とした音楽ソフトの提供が進むと、音楽産業は結局レコードがなかった時代へ逆行して行くんだろうな」と言う言葉に重みを感じます。実演(ライブ)こそが音楽産業の中心として核を為すだろうということなのです。事実、以前のコラムでも書いたようにコンサートイベントの開催が増大し、紛れもなく音楽産業の中心になってきました。極端なことを言うと20世紀はレコードやCDをたくさん売って収益を上げるということが音楽産業の方法論でしたが、間違いなくこれからは実演こそがその中心となるに違いありません。どんな実演を行うか? これが関係者の大きな課題となるはずです。

音楽であれ映像であれデジタル化はその表現に無限の可能性を与えました。ただデジタル化によって気軽に様々なコンテンツが手に入る事でその内容が希薄になってしまったのではいけません。通信、音楽ソフトそして映像ソフト、それら全てのアウトプットが“スマホ”になってしまうというのでは、あまりにも寂しすぎます。

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