COLUMNCOLUMNグーフィ森の『Single Speaker』

Single Speaker Vol.10 「お金払うんですかぁ!?」 

2014-04-30

今回は嬉しいご報告をひとつ。
このコラムからFMヨコハマの番組が生まれました。毎週水曜日の深夜25:30から始まる『ロックページ 〜ミュージック プレゼンテーション〜』というプログラムです。実は、このコラムを見てくれていたFMヨコハマの制作部長が「あのコラムをラジオにしませんか」と、声を掛けてくれたのです。ですが、ボクはまだまだおしゃべりの方が苦手なのでお断りをしたところ、「なにかグーフィさんが絡んで出来る方向を模索しましょうよ」ということになり、そこからわずか1ヶ月、あれよあれよという間に4月からスタートすることになったのです!? 声を掛けてくれたFMヨコハマの制作部長は、25年前ボクがナビゲーターを担当していたFM番組のディレクターでした。「あの番組が25年を経て復活するというストーリーで始めてみませんか?」、その提案に大いに納得しました。で、親友である今野多久郎クンにナビゲートを依頼。そしてボクと同世代のオジサンだけでは華がないと(笑)、19歳の現役女子大生であり、テレビ・ラジオ・舞台等で活躍している倉益悠希クンをアシスタントに迎え、グッドミュージックを探索するプログラムとしてスタートしました。ボクは出演はしませんが、番組の中で司令塔として毎回おもしろ楽しいミッションを今野多久郎【主任】と倉益悠希【研究員】の二人に出していくという、言ってみれば『スパイ大作戦』の音楽版です。

その番組にお邪魔したときのことです。「えー!? 音楽って買うんですか!?」とスタジオの中から倉益クンの声。これには今野主任も作家を務めている音楽ライターの佐伯明クンも、そしてコントロールルームにいる全スタッフ、もちろんボクも、この言葉に唖然でした。今野主任が「音楽をどうやって手に入れるか?」という話を倉益クンに振ったときのことです。そこはやはり想像通り19歳の女子大生ですから、スマホのYou Tubeからお気に入りの曲を探すとのこと。だからCDをはじめとしたパッケージを手に入れるなんてことは、彼女の頭の中にはこれっぽっちもないのです。「音楽って買うんですか!?」という驚きの発言はこうして生まれました。唖然としましたが、妙に納得できたのも事実です。不思議な世の中になってきましたねぇ。また、番組の中で今野主任が「じゃあ、コンサートはどうなのよ?」と問いかけると、「コンサートは体感ですからお金を払うのは納得できますよ」とあっけらかんと倉益クンは答えます。更に今野主任は畳みかけます。「じゃあ、ライブ・アルバムはどうなのよ?」、すると帰国子女の現役女子大生・倉益クンは「ライブアルバムって絵がないんですよね? 絶対買わないです。ちょっと意味がわからないです」、今野主任を始めとするその場に居合わせたオジサン達は唖然を通り越してもはや絶句・沈黙でした。

ボクと同世代のミュージシャンであり音楽プロデューサーである今野多久郎と、ベネズエラ&サウジアラビアからの帰国子女にして現役女子大生の倉益悠希クンとの凸凹コンビが織りなす不思議な音楽トークは、現在の混沌とした音楽産業事情を集約したそれは意味深いプログラムになっていると思います。

10年ほど前に倉益発言に匹敵する爆弾発言がありました。「スピーカーってなんですか?」この爆弾発言をしたのは当時16歳の高校生。彼らにしてみると音楽はイヤフォンで聴くもの、家にはオーディオなど存在しません。まぁ、昨今の音楽環境(家電含む)を考えればわからなくもない話です。イヤフォンとて限りなく小さいスピーカーとも言えなくもないのですが、家電製品の仕組みなどよほどのマニアでなければ調べることなどないでしょう。薄っぺらい現代の液晶テレビではスピーカーから音が出ていることなど微塵も感じさせません。家庭にオーディオマニアがいない限りはスピーカーが震えて音を出していることなど見ることもないでしょう。だからして「スピーカーってなんですか?」と言う、オジサンにはそれはビックリな爆弾発言となるのです。以前にも書いたように、“いい音”という概念は個人の趣味趣向だったり感性によるところが大きいですから、スピーカーから出る生音を薦めたところで、イヤフォンやヘッドフォンで音楽を聴くことがベーシックになっている世代にはなかなか届きにくいんだと思います。彼らが足を運んでいるロックフェスも、スピーカーからデカい音で生音が出ているんですけどねぇ。どうやら個人で音楽を聴くこととコンサートを体感することは、現在の若者には別次元で存在してしまっているようです。倉益クンのビックリ発言、そして高校生の爆弾発言、音楽には未来はないのかと病んでしまいそうですが…。

いやいや、『ロックページ 〜ミュージック プレゼンテーション〜』が教えてくれました。番組にお邪魔する度に現在の音楽の“混沌”を実感してちょいと沈んだりもしますが、ロックの創世記を体感したボクらの音楽によるプレゼンは倉益クンにとってけっこう刺激的なようで「元気をもらえますねぇ!」。この言葉を10代から引き出すことができるのであれば、まだまだ音楽のパワーは健在です。そんな音楽を毎回プレゼンしているのが『ロックページ 〜ミュージック プレゼンテーション〜』。よろしければ。

http://www.fmyokohama.co.jp/onair/program/RockPage

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