COLUMNCOLUMNグーフィ森の『Single Speaker』

Single Speaker Vol.16 「お待たせ、Q&A」 

2014-11-06

今回は久々に読者の方からいただいた質問に答えてみたいと思います。

●音楽のデジタル化が様々な弊害を生んでいるという話を聞きます。具体的にはどんなことですか?

先日、ミュージシャンであり音楽プロデューサーの友人が訪ねてきてくれました。なつかしい話や様々な音楽話で大盛り上がり、なんと4時間半も話し込んでしまいました。そんな中彼が一番力説していたのが、デジタル化の大きな波に飲み込まれてしまった音楽シーンの話です。すっかり変わってしまった音楽シーンでは、特に制作現場の変貌が凄いことになっているようです。それはまさに音楽における産業革命といってもいいかもしれません。機械化によって工場が大変貌を遂げた産業革命、それと同じ事が音楽シーンで起こってきていると友人は教えてくれました。まぁ、要するに音楽制作に携わっていたミュージシャン、エンジニア等の仕事が、PCが導入されたことによりどんどん少なくなってきているというのです。

少し前に、あるアカペラグループの楽曲の作詞をしてくれないかと依頼を受けました。リハビリにもなるかと軽く引き受けたのですが、この仕事で友人との話に出てきた音楽シーンの急変貌を初めて実体験することとなったのです。まず楽曲のデータ音源と譜面のやり取りがメールで行われました(今のボクには有り難いことです)。以前ならレコーディングスタジオやレコード会社のオフィスで行われていたことがメールでのやり取りです。「最近はレコーディングもメールでやり取りすることもあるんだよ」と言っていた友人の話を思い出しました。ミュージシャンがメールで送られてきたデータ音源に自分のパートを打ち込む(録音する)、そんなことが現在では日常茶飯事に行われているらしいのです。デジタル化による合理化はなんだか新しそうですが、アナログ人間のボクとしてはちょっぴり寂しい気もします。合理化によってどんどん人の手が必要ではなくなっていく、そのことを“新しくていいこと”として無条件に賛美・推進していいものかどうか疑問に思います。音楽シーンのみならず様々なシーンにおいて、最近ちょっとぼやきオジサンになってしまっているボクです。といってもそれは制作者サイドに立った視点のことです。合理化・簡素化されたことにより制作単価が小さくなる、これは音楽に限らず世の常ですよね、当然ユーザーであるリスナーには安く製品(音楽)が提供されるわけです。ユーザー目線でいうと、手軽で安く手に入れることが出来るというのは喜ばしい結果です。だからして難しい問題だねぇ。身近に手近に手に入ると言うことは…。音楽業界もこの先いい着地点を見つけなければいけないね。


●最近の音楽シーンで何か気になっていることはありますか?

その1:日本の音楽シーンにおいてはセールスやライブの動員に苦戦する若手アーティストを尻目に、山下達郎・竹内まりや・サザンオールスターズ・矢沢永吉・ユーミン・小田和正といったベテランアーテイスト達の大躍進が目に付きます。ビックリです! なので、「それはなぜなんだろう?」と少し考えてみました。ヒットを飛ばす全てのベテランアーティストにいえることは質の良い作品(楽曲やコンサート)を送り出していることです。そしてそこにもうひとつ大切なキーワードを見つけました。それは“丁寧”ということです。質の良い作品を丁寧に仕上げる、そしてファンに丁寧に届ける、これはライブにおいても同様。ごく当たり前のことですが、この当たり前のことをとにかく続けること。今もトップを走るベテラン達はそこが実にしっかりと出来ているように思います。

その2:「3Dホログラム」です。今年5月にラスヴェガスで開催された「ビルボード・ミュージック・アワード」で、マイケル・ジャクソンのパフォーマンスが世界で初めて3Dホログラムのシステムを使って披露されました。プロジェクションマッピングを超越した世界観は圧巻でした! 映画同様ミュージックパフォーマンスでも時間とお金を掛ければなんでも可能になる世界に突入しました。こうなると今後ますますエンターテインメント作品は、新しい技術を駆使した仕掛けだけではなくその“センス”こそが問われることになっていくんでしょうね。

その3:様々な音楽から楽器のソロパートがほとんど聴かれなくなったという事実に驚いています。名曲には名演がありました。ギターやキーボード、ストリングスがイントロや間奏、そしてエンディング等を奏でていました。先にも書いたようにレコーディングのデジタル化による合理化・簡素化が進んでしまったことと、デジタルビートがアレンジの主役となってしまったことで、ソロパートを聴かせるミュージシャン達の参加が少なくなってきています。そのため音楽からソロパートの名演がどんどん消えていく傾向にあります。ギター小僧のボクとしては、カッコいいギターソロが聴けなくなるのはちょっと寂しいなぁ。


今回は少しだけご質問に答えましたが、何かお題があればボクもコラムを書きやすいんです。どしどし質問・ご意見をお寄せくださいませ!

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