COLUMNCOLUMNグーフィ森の『Single Speaker』

Single Speaker Vol.17 「グルグル廻る難題!?」 

2014-12-10

先日、フォーミュラEの世界選手権第2戦をテレビにて観戦しました。フォーミュラEとはF1の電気自動車版とでもいったらいいでしょうか。今年から始まった国際自動車連盟主催の世界を転戦する選手権です。これがすごかった。なんたって多少タイヤが細いもののルックスはまるでF1、されど電気自動車ゆえに聞こえてくるのはわずかなモーター音とタイヤノイズのみ。なんともすごい絵です。音声をミュートしてF1を観ているようなもの。またまた新しい時代へと突入したなぁと実感しました。そしてフォーミュラEがサーキットをグルグルと周回するのと同時に、数々の想いもグルグルと脳裏を巡りました。

ボクは幼少の頃から無類のクルマ好きでした。小学校の時から少年漫画を読むのではなく、車雑誌やレース専門誌を定期購読していました。まぁちょっと大人びた子供だったわけです。クルマ好きになったことは周囲の大人が喜んでくれました。というのも当時のボクはとにかく何を見ても「あれなに?」「これなに?」「それなに?」と大人を捕まえては“なぜなに攻撃”の質問攻め。周囲の大人達はかなり迷惑していたようです。そんなですからボクの興味がクルマへと向かうことで、静かになった、もう質問攻めにあわなくてもすむとホッと胸をなで下ろしたそうです(笑)。そのため車雑誌やプラモデルの購入は親のお墨付き状態で予算は天井知らず!? 

そんな時に日本人レーサーのパイオニアにしてボクのヒーローである生沢徹氏が、ヨーロッパのフォーミュラ選手権にエントリー。1970年のF2ドイツグランプリでは2位となり日本人初の快挙を成し遂げました。日本経済は高度成長期に突入し、一般家庭でもクルマを購入する時代となり、高度成長同様クルマの人気もうなぎ登り。生沢氏の快挙と翌年のスティーブ・マックイーン主演の映画『栄光のル・マン』の大ヒットもあって、モータースポーツががぜん脚光を浴びてきました。当然にわかクルマファンやにわかモータースポーツファンを名乗る人物が日本国中で急増。「やっと時代がボクに追いついてきた」とボクは当然のようにドヤ顔です(笑)。周囲の大人達の尊敬の眼差しを浴びながら(!?)ボクのクルマ好きもスクスクと成長しました。大学に入り運転免許を取得した頃からクルマへの嗜好が少しずつ変わり出しました。憧ればかりを追い続けるのではなく、身分相応のクルマ選び、そして海外で開催されるF1などの選手権ではなく国内のモータースポーツへとその関心は移行していきました。そして日本経済はバブルへ突入、と同時にF1が空前のヒット。セナとプロストという二人の天才ドライバーの出現でF1は日本国中で大ブーム。「あのクルマってなぜ方向指示器がついてないの?」なんていう酷いクルマ音痴の女性までもが「キャ〜、セナ様〜〜!」と黄色い声をあげるほどの異常なまでの盛り上がりを見せました。しかし、逆にそのこと自体がボクをモータースポーツから遠ざけてしまう結果となってしまったのです。多くの人にモータースポーツに興味をもってもらうことは嬉しい反面、ポピュラリティーが増すことによる弊害とでもいうのでしょうか。マニアを自負していたボクにはその環境がちょっと面倒に思えてしまっていたのかもしれません。

クルママニア遍歴、モータースポーツ変遷が巡る巡る中、それはそのまま音楽のことへと重なりました。フォーミュラEの出現、バイクの伝統レース『マン島TT』にも電動バイクのカテゴリーが誕生と、それはそのままレコードからCD、そしてデジタル音楽配信へと変化していった音楽の流れと同じに思えてしまいました。モータースポーツは未来に晴れ間が見えてる感じがする、しかしなぜか音楽にはまだ明るい未来が見えません。モータースポーツとて経済環境の変化、地球環境の変化、それに伴うマイナス要素はいつの時代も湧いてきてるはずです。しかしいつの時代もそのマイナス要素を払拭すべく英知が集まり新しい展開を見せ発展してきたのだと思います。だからモータースポーツの未来はきっと明るいと思えるのです。何十年か先にスターウォーズのワンシーンのように空飛ぶクルマでのレースに世界中が熱狂しているんじゃないかとすら思えてしまいます。それがクルマ業界のパワーです。それに比べ音楽業界の未来は雲行きが怪しいとしか言いようがありません。そう感じてしまうのはボクだけでしょうか。音楽仲間に出会えば「もう、最悪だよ〜」「やばいよ〜」「音楽に未来はないね」と溜息の嵐が吹き荒れています。

先日、参考になる話を見つけました。これまたテレビのドキュメンタリー番組の中です。昨今、話題の有人火星探査のNASAのプロジェクトに映画監督のジェームズ・キャメロン氏が諮問委員を務めるシーンが登場し、「これだ!」とピンときたのです。行き詰まったときは業界外から優秀なブレインを求める。これが簡単そうでいて意外に難しい。業界内で固まってしまった意見(頭)はなかなかほぐれない。それはきっとクルマ産業、そしてモータースポーツ界でも同じだったと思います。その都度柔軟な姿勢を見せ、外部から英知を募る。そんなことがこのNASAのプロジェクトのように自動車業界には出来ていたんじゃないか? と思えたのです。まだ普及率が1%にも満たない電気自動車によるフォーミュラEの世界選手権の開催、莫大な資金調達、難題は山のようにあったと思うのです。それをクリアするための英知はきっと広く業界外から求めたと思うのです。なぜそう思うのかというと、チームオーナーにあのハリウッド俳優のレオナルド・ディカプリオが参入してること、日本の自動車メーカーが参戦していないにも関わらずあの鈴木亜久里がチーム監督を務めてエントリーしていると言うこと。これは選手権開催より数年前からうまいプレゼンテーションを各方面で展開していったからだと思うのです。またモータースポーツ界で武者修行していたアラン・プロストの息子とアイルトン・セナの甥っ子が参戦し、世紀のバトルの再来と話題を呼んでいること。これも確実に人気を取るために早くから彼らをフォーミュラEへ誘ったのに違いありません。そして極めつけはフォーミュラ選手権にSNSを導入し、一般の参加を促していること。SNSを利用した人気投票のポイントが加算され勝敗を大きく左右するという全く今までにない新しいシステムが導入されているのです。これらはきっとモータースポーツ業界から発せられたというよりは業界外部からの意見を柔軟に取り入れた結果じゃなかろうかと思えるのです。だから音楽業界も業界外に英知を求めてはどうかとグルグル周るフォーミュラEを観ながら考えたのです。

につけても、気になったのがGPの開催地。気がつけばF1もバイクのmotoGPもフォーミュラEも、中国とマレーシアで開催されています。やはり行き詰まった時に鍵となるのはチャイナなんでしょうか。ん〜〜、著作権がうまく認められない国だからなぁ〜。いやいや必ず出口はあるはずです。

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