COLUMNCOLUMNグーフィ森の『Single Speaker』

Single Speaker Vol.18 「な、なんと初夢で!?」 

2015-01-13

あけましておめでとうございます。
お陰様でこのコラムも2度目のお正月を迎えました。新年一回目のコラムは“夢”にまつわるお話をしようかと思います。

皆さんは今年どんな初夢を見ましたか? 夢はその時置かれている自身の環境に大きく左右されるといわれています。で、夢を題材にしたのにはひとつ理由がありまして、実は3日に見た夢に初めて“音”があったのです。大病を患ってから早6年。その間、体調の変化と共に夢もどんどん変化していきました。まずはその変遷をお話ししましょう。

脳出血を発症し、その後7ヶ月間という長い入院生活を送りました。その間、本にまとめられそうなくらい摩訶不思議で奇々怪々なストーリーの夢が毎夜毎夜続きました。例えば身体が小さなトランクに入るほどの立方体に変形してしまって、その状態で意識はコンピューターの中に入っていってしまう。するとなぜかそのコンピューターが盗まれ、宇宙ステーションに乗せられてしまう。それを取り返しにこれまたなぜかカウボーイと一緒にフロリダのケネディ宇宙センターに侵入し、宇宙ステーションを目指そうとしていている。その夢の中でふと目が覚めると(不思議なことに夢の中で何度も何度も目が覚めるんです)砂漠の真ん中でキャンプファイヤーをしている。朝まで大騒ぎして眠り込んでしまったら炎天下で目が覚め、気付くと身体がミミズのように干からびている。とまぁ、こんな感じで夢がどんどんハチャメチャに展開していくんです。そのうち夢なんだか現実なんだか区別が付かないところまでいっちゃいました。

冷静に夢を判断できるようになったのは、夏に倒れてから数ヶ月後の年の瀬でした。ドクターに「変な夢ばかり見るんです」と相談すると、「脳に大きな疾患を持つとしばらくは脳がパニックを起こしているんです。ですから幻想とも妄想ともつかない不思議な夢を見ることがあるようですよ」と教えられ、安堵すると共にちゃんと夢を書き留めてもらっておけば良かったとすごくもったいない気がしたことを覚えています。出版していれば間違いなくベストセラー作家です!? 惜しいことをしました(笑)。摩訶不思議な夢を見なくなった頃、つまり意識レベルが安定してきた頃の夢というのがまた不思議でした。それはものすごく現実的な夢で、例えば音楽関係者と会っている夢やコンサート会場にいる夢などなど、元気だった頃の日常が展開するというものだったのです。しかしとにかく目線が不思議でした。隠し撮りした映像のようで、まるで双眼鏡を覗いて見ているよう。自身の身体はどこにも出てきません。全てが双眼鏡目線、しかも90°傾いているアングル、なのにそんなボクを不思議と思わない登場人物。この手の夢が毎夜毎夜続きます。

そして夢は更に展開を見せます。双眼鏡目線に自身の手足が登場するようになります。意識レベルがまたひとつ上がったんでしょうね。ですが右手・右足しか出てこない。ボクは左半身麻痺の後遺症があるので、そのことを身体が理解し始めたんだと思います。右手・右足は登場しますが相変わらず90°傾いたアングルです。なのにまたもや夢の登場人物はそんなボクを何も不思議がらない。この頃は目覚めた時にも夢の中の世界がずっと後をひいていて、ある時リハビリのトレーナーに「なぜ毎日病室を模様替えしてるんですか?」と訊いたことがあります。もちろんトレーナーはキョトンとしていました。だって「昨日は病室をケンタッキーフライドチキンの店内にセット替えしてたでしょう?」とか「昨日はキャンプファイヤーのセットを組んでませんでした?」というビックリするような質問をしていたのですから!? 出てくるものは現実的とはいえ、やはりそのシチュエーションや展開はまだまだ奇想天外なものでした。

次の大きな変化は3年ほど前のことです。今まで夢の中で立ち上がったことがなかったのですが、いきなり以前のように一人で立っている夢を見るようになりました。もちろんストーリーは相変わらず支離滅裂なのですが、とにかくしっかりと立っているのです。まだ歩いたり走ったりする夢は見ることはありませんでしたが、その夢を見るようになった頃から歩行訓練がかなり進歩したような気がしています。何か関係があったのかもしれませんね。まぁ、こんな風に夢はどんどん進化してきました。ですがまだ歩いていません。そしてなにより夢の中ではずっと音がなかったのです。ボクは耳にも後遺症がありますし、声帯も半分麻痺しています。ですから雑踏などの音が苦手な上に話すことも苦手で、極力音の少ない静かな環境で生活しています。

しかしそれを改めたいと思ったのです。このお正月の3日に長嶋監督(巨人軍終身名誉監督)のドキュメンタリー番組を観ました。監督の不屈の7年間のリハビリを追った番組でした。改めて監督から大きな勇気をいただきました。実はボク、監督と同じ施設でリハビリを受けているんです。「リハビリは裏切らない」という監督の言葉をこの施設で知り、いたく感銘を受けました。監督は70歳を過ぎたとは思えないくらいハードなトレーニングをしています。リハビリというよりはまるでアスリートの筋トレ! お正月の番組の中でもリハビリ施設を訪れた松井秀喜選手がそのハードさに脱帽していたくらいですから。「リハビリは裏切らない」という監督の信条を自ら実践している様を施設で拝見するたび勇気をもらっています。そして今回この番組の中で「今後の目標は?」と訊かれ、「これからはもっともっと外へ出て行って多くの人と会い話をすることが良いリハビリに繋がると思っているんです」と、どこまでもポジティブな監督の言葉。またもや脱帽です。

その日の夜、今年初めて夢を見たんです。それは初めて音のある“夢”でした。なんと夢の中で自分が流暢にしゃべってる。元音楽を生業としていた人間にとって夢の中にも音のある世界が広がってきたということは嬉しい限りです。耳の不具合が改善され、滑らかに話すことが出来るようになるかもしれないと期待はますます膨らみます。この初夢(?)はミスターの威力か正夢か!? 改めてミスターは巨人の星、そしてリハビリの星であることを確信しました。

追伸:監督のリハビリ風景にBGMを付けるとしたら“飛雄馬”のくだりを“ミスター”に変えて『巨人の星』のテーマ曲といきたいですね!?

今年は皆さんからのご質問をどんどん取り上げようと思っています。
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