COLUMNCOLUMNグーフィ森の『Single Speaker』

Single Speaker Vol.19 「音楽ばかり聴いとったんかい!?」 

2015-02-23

先日テレビの情報番組を観ていたら、こんなネタで出演者達がえらく盛り上がっていました。それは、“どうして年を取るごとに一年がどんどん短かく感じられるようになるんだろう?”という疑問。それにある若い女優さんが「一年は人生分の1の分数で表すんですよ」と答え、続いてこんな説明をしました。「4歳の子供の一年は4分の1、25歳は25分の1、そう考えると年を取るごとに分母がどんどん大きくなり、その分だけ一年が短くなっていくんです」、その説明に出演者一同ひどく納得。で、大盛り上がり。実はこの年齢と分数の関係の話、かれこれ15年程前にレコーデイングエンジニアの若い女性から教えてもらったことがあるんです。その時もスタジオに居合わせたメンバー全員がいたく納得したのを覚えています。そのことをテレビを観て思い出していました。

ところが考えてみるとこの6年半、つまり大病を患ってからの6年半に関しては、決してこの年齢と分数の関係が当てはまってないんじゃないかと感じているんです。倒れたのが52歳の時、そして59歳を迎えようとしています。この6年半は決して50何分の1という早いスピードで時が流れてなかったように思います。そこで、こう考えました。分数の方程式はいったんリセットされたんではないだろうか? 年齢を重ねたことで経験則をエネルギーにどんどん時の加速度が増していく中、リセットされた新たな分数が登場したのです。つまり昨年の一年間は58分の1ではなく6分の1ではなかったろうか。そう考えるといろんなことに合点がいきます。倒れて7ヶ月に渡る長期入院、そして6年の長きに渡るリハビリ生活。いったんリセットされた分母なので、それぞれがとても長く、濃密に感じられたんだと思います。つまりボクは6歳半の子供ということなんですね。だから一日一日がとても長い。一年は更に長い。“あっという間の一年”と言っていたのが、遠い過去の出来事のように感じます。

濃密な時が流れていた青春時代に聴いた音楽は、59歳となる今でもずっと聴き続けています。ビートルズフリークになったのは48年前、ボブ・ディラン信者になったのは46年前。となるとビートルズに関しては59分の48、ボブディランが59分の46という人生における占有率。人生の約81%と約78%はこの両アーティストを聴き続けているということです。なんともすごい数字だなと改めて思います。この2組の延べ視聴時間は一体どのくらいになるんでしょう? 知りたい気もしますが、それはちょっと怖い気もします(音楽ばっかり聴いとったんかい!?)。この両アーティストに出会えたことが音楽人として“最高の幸福”だと思っています。

リセットされた新しい人生は分母が一ケタの分数がまだまだ続きますが、ビートルズとディランを含む音楽との付き合いはこれからも占有率を伸ばしていくことでしょう。皆さんにもボクのビートルズやディランのような存在のフェイバリット・アーティストが登場していますか? 

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