COLUMNCOLUMNグーフィ森の『Single Speaker』

Single Speaker Vol.39 「お喋りの薦め、そしてご注意!? 」 

2017-02-01

先日ボクが参加しているラジオの打ち合わせがありまして久しぶりの顔が集まりました。ラジオのディレクター、番組プロデューサー、音楽プロデューサー、音楽ライターそしてボク、みんな同世代で昭和野郎の集いです。これが懐かしいことに“昭和の長話”だったのです? とりとめもない話が進行していく中で、次第に番組ブラッシュアップの骨格が固まっていくというパターンの長話です。まぁ、“おしゃべり(むだ話)”とミーティングがドッキングしたようなMTGで、最高の時間がたっぷり持てたというわけです。リハビリ生活を送る身としては、とても貴重な現役復帰気分の時間でした。

みなさん、ちゃんとむだ話してますか? ネット上でデジタルな一方通行のコミュニケーションばかりになってませんか? 顔を突き合わせての“むだ話”、結構大切なんじゃないかとボクは最近思ってます。たわいもない時間の中からたくさんの新たな発見や新しい物事との出会いが生まれてきたことは、記憶の中に良き思い出としてたくさん残っています。
この日も「最近のJ-POPはね、◯△◯が面白くなってきてるよ」とか「ミュージシャンたちは今、□△□でさぁ、ある意味◯◯◯で元気ないのよ」「電波であれテレビであれメディアは今、ネットでの展開をいかに提案していけるかがキモだねぇ」という業界オジさんたちの業界世間話から、「あそこにできた△◯△のパフェがめちゃめちゃうまいのよ」というガールズトーク(なんだそりゃ!?)まで延々4時間半、昭和世代のおじさん長話トークは続いたのです。むだ話と簡単に切り捨てるなかれ、ボク的には、TVなんかじゃ得られない、ありがたい生きた情報交換の場なのです!

そういやぁPOPEYE編集部時代は毎日がこんな感じでした(毎夜毎夜のむだ話のオンパレード状態)。編集部は、様々な分野のオーソリティたちが集まっていたところでしたから、編集部内を飛び交ってるむだ話は、中に詰まっている数々の情報がそりゃ鮮度抜群、最先端情報山盛りでした。原稿そっちのけでお喋りにふけっていたことは忘れもしません(ペコリ)。前回のコラムに書いた『必要な無駄』とは、まさに当時のむだ話のことを言うのかもしれませんね。スマホはおろかFAXさえ無い頃のことですから、お喋りは最高のコミュニケーション、そして最高の情報収集の手段だったのです。まぁあの頃の毎夜毎夜のむだ話大会(?)は、今で言うところの“Twitter”もしくは“LINE”ってとこでしょうか!? もちろん、当時は顔をつき合わせてのLIVEでしたがね。

当時のPOPEYEは飛ぶ鳥状態、発行部数も100万部突破という今じゃあり得ないような数字。まぁ時代ですから・・・。とはいえ当時のPOPEYEにはヒットの元とでも申しましょうか、不思議な編集の方程式があったんです! それは、読者が何を望んでいるのか? を的確に判断し編集に反映させる、というのではなく、読者に何を届けたいか!! つまり、自分たち(POPEYE編集者)がこれが面白い、これがスグレモノだ、そう感じたもの・ことを読者に向けて発信すること。これに徹すること。それがある意味POPEYE鉄板の掟のようなものだった。これ当時ぶっちぎりの状態、無敵でした。昭和オジさんたちのむだ話中、そんなことも思い出しておりました。

この方程式、現代で試してみるのも面白いかもしれません。マーケット分析による指標よりも、まずは自分たちが楽しめるもの、面白いと思ったものを、自分たちがいる環境の中でクリエイティブしてみる。これ案外かも・・・です。

そうそう、すごい事件を思い出しました。30年ほど前のことです。奥さん(その頃はまだ付き合っておりません。ボクのスケジュール管理をお願いしている存在でした)を夕食に誘った時のことです。新宿のヒルトンホテルでした。新宿ヒルトンなのには大きな理由がありました。じつはこの日、山下達郎さんのPOPEYEのインタビューが入っていたのです。
そう、インタビュー取材が終わる頃を見計らって1階ロビーで待ち合わせたんですが、これが大失敗だったのです。

インタビューは1時間で無事終了。写真撮影も無事終わり、そこから達郎さんとボクで音楽世間話へ突入。これが間違いでした。そうです。達郎さんのマシンガントークに火をつけてしまったんです!? 次から次へと飛び出す楽しき音楽話はどんどん加速します。ボクもおしゃべりですから、仲良しこよしのおしゃべりはもう止まりません。運悪く(!?)、この日の取材はPOPEYEが最後だったようで、制限時間は無制限。スタッフたちは誰一人止める気配はありません!? 「じゃ、この辺でブレイクタイム」となった時には、奥さんとの約束からは2時間近いオーバー。冷や汗がドバーッ!! 携帯もなかった時代ですから、達郎さんのマネージャーさんに「すいません。1階ロビーでスタッフの女性を待たせているんで、もうすぐ降りるからと伝えてもらえますか」と、まずは危険回避!? と思ったら「どなたもいらっしゃいませんでしたよ」とマネージャーさんが戻ってきた。「やばー、怒って帰っちゃった!!」と二度目の冷や汗がドバーッ(偶然にもtoilet timeだったことがのちに判明)!! とそこへ「でね、グーフィ…」と、達郎さんが帰還!? キターッ!! この「でね、でさぁ」から始まるのは長話という定説通りの展開へ。マシンガントーク再開です。ボクも自動小銃(おしゃべりの)で防戦します。すると当然のようにおしゃべりのスパイラルへ!? とまたまた話は大盛りあがり。新宿の夜は更けていきます。4時間近く話は盛り上がって、1階ロビーに降りると、どう見ても怒っているのを通り越して、呆れてしまった顔をしてる奥さんがいます!? 三度目の冷や汗がドバーッ!! そしてこの呆れたお喋りの思い出を話していると、奥さんがムカッ!! で、冷や汗ドバーッ!! いい思い出です!?

みなさん、お喋りは大切です。が、気をつけましょう。というお話でした!?

アッ、この話、達郎さんにはナイショです!!

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