COLUMNCOLUMNグーフィ森の『Single Speaker』

Single Speaker Vol.47 『普通がイチバン嫌!?』 

2017-10-18

●今日ちょっとびっくりした事があった。週2日訪問マッサージにお世話になっているのだが、その先生との会話が思いのほか盛り上がりをみせた。
1回1時間ほどの治療中、普段はほとんど会話がない。最初の挨拶程度で後はお互いほぼ無口のままだ。言っておきますが、毎回ボクが寝入ってしまうからでは決してありません!? 耳が悪く、口の中にも麻痺がのこり会話が不得意なボクを気遣っての無口なのです。そんな二人が今日は饒舌でした。
先生が、石川県の金沢近くの日本海沿いの田舎町の出身だということはかすかに覚えていました。そのことを聞いたのはかれこれ7年ほど前のことですから…自信はなかったのですが、話はボクの方から口火を切ったんです。
「先生はいつもどうやって田舎に帰るんですか?」「普通は飛行機ですねぇ」そうだよなぁ、金沢の近くってことは石川県の空の玄関口小松空港にも近いだろうし、最近は北陸新幹線も開通して便利になっただろうから、やっぱボクの郷里の丹後地方とは比べちゃいかんわな、やっぱり。
「空港からは近いんですか?」「そうですねぇ、汽車、いえ列車で…2時間くらいですかね…」この汽車という単語に俄然反応したのが、ボクの田舎者魂でした。ボクの郷里北近畿丹後地方一帯はその大半の鉄道が電化が進んでおらず単線路線地区です。ゆえに昭和の半ばまではSLが現役バリバリで走っていました。その名残りからですかねぇ、とにかく鉄道はとりあえず“汽車”って呼んじゃうんですよね。想像するに先生の郷里も同じようなものじゃないかと勝手に予想しちゃいました。
「先生の田舎は、単線でディーゼル列車ですか?」「そうです。そうです。しかも普通列車は一車両ですねぇ。テレビでよく観るあの寂しい田舎の風景です。年末帰るとき、雪なんかがあったりするとそりゃぁ寂しいですよ~。すごい田舎に帰ってきちゃったーッって感じになります」「同じです。同じです!!」いやぁ7年目にして初盛り上がりです。
「わたしの田舎は石川県の金沢付近と言っても、福井県との県境で、金沢よりも福井の東尋坊(日本海の名勝地)の方が全然近いんですよ」「そうなんですか。じゃぁボクの田舎とも近いですね…」イヤイヤえらくローカルな話題ですいません…けっこう興奮中です!?

そしてこの妙な興奮はさらに続きます。
「森さんは、京都ですよね?」「いやぁ京都って言っても、日本海沿いの田舎なんです。丹後です」「えーッ、もうお亡くなりになったんですが、私の患者さんも昨年まで丹後出身の方がいましたよ」「エーッ !!」何を驚いてるんだとお思いでしょうが、同郷の人物の話題が上がったことなど東京に出てきてかれこれ40年近くになりますが、初めてのことです。その興奮度合いは相当なもの。お察しください…。

でね、この不思議な興奮劇の後にこう思ったんです。やはり人とコミュニケーションを取ることは大切なんだな、と。先生と話そうとどこでどう思ったのかは覚えてないんですが、とにかく今日は先生と話さなくっちゃって思ったんですよね。いやぁやはりコミュニケーション大切です!! その次の新しい世界の扉を開いてくれるのは、人とのコミュニケーションかもかもです。と、 改めてごく当たり前のことに感動している自分が少し可愛く思えた本日のマッサージでありました。(クスクスッ)

●毎日の介護支援でお世話になるヘルパーさんたち、そして週4日リハビリでお世話になる療法士の皆さん、その数この8年でざっと100人近くにお世話になってます。皆さんとても若い。ほとんどが20代30代。新しい世の中の流れの実態をあれこれ知りたいボクにとっては、なかなか好都合な素晴らしい環境のはずなのだが、じつは現状はちょっと違ってるんです。ちょっとびっくりしたのですが、出会う子出会う子無趣味なのです。よって話がうまく続かない、弾まないそんな日々なのです。LINEやインスタ映えの話は残念ながらボクにはできません。目や耳に不具合があるだけでなく、発症した年がスマホ元年ですから…全く使用経験がないんです。
とは言っても話好きのボクですから、懲りずにアタックはするんですよ、「好きな食べ物は?」から始めて、「どこか行ってみたいところってある?」とかとかね、いろいろ話しかけてはみるんですが、「べつに~ないです」とか「あまり旅行好きじゃないんです」とそっけない返事が“にこやか”に帰ってくるだけです。万事が万事こんな感じなのです。まぁ~、話の盛り上がらないこと盛り上がらないこと。

で、以前入浴サービスに来てくれていた男子がサイクリストでかなりの趣味人間なのであれこれ話すんですが、ジャストミートって感じじゃないんです。週一で来てくれるトレーナーの女子もいま香港にハマっているという旅行好きなんですが、この子ともイマイチうまく噛み合えない。情報雑誌を15年近く作ってきましたし、とにかく話のネタの幅には自信があったんですが…全くもって通用しない。自信喪失です。それでも懲りず話しかけているとこんな展開が、
サイクリストの彼との話の中のことです。「森さんは何乗ってたんですか?」「ビアンキのカーボン・スポーツとアレックス・モルトン」「エッ!!」と、驚いた顔をしたかと思うとなんだかいけないものにふれちゃったかの如く話を変えます。「時計もお好きなんですよねぇ。これ見せてもらっていいですか?」「どうぞどうぞ。他も見てみる?」と出したのがボク自慢の100本余りのウオッチコレクション。この日以降彼は自転車話も時計の話も全くしないまま違う営業所へと配置換えになってしまいました。なんだかモヤモヤです。そのモヤモヤを晴らしてくれたのは、入浴介護の2代目主任でした。その彼もサイクリストで多趣味、しかもおしゃべり好きです。その彼が「森さんいきなりモルトンはないですよ、しかも高価なビアンキの話までって、話できすぎですよぉ」「できすぎって言われても…本当の話だから…」「エーッ !! じゃ時計も本当なんですね」「そう、ほら~」と時計がゴチャリの箱を差し出した。すると彼、こんなこと話し始めました。「ビアンキのカーボンにモルトンですかぁ。どちらも100万超えですよぉ。それで紙箱に時計がグチャってなんですかあ!? ダメです。ダメです。もう全然ダメ。そりゃぁ、みんな引いちゃいますって!!」「エッ、マジで?」「今の若い奴らは、身の丈をよ~くわきまえてるんです。それで自分とは違うレベルの人間とはコンタクトをとらなくなるんです。森さんエイリアンにされちゃったんですよぅ」「エーッ!!」

説明しよう。確かにビアンキはイタリアの老舗自転車ブランドで、ボクのカーボンフレームのロードバイクは、まだカーボンフレームが珍しい頃の名品です。モルトンは自転車のロールスロイスとも言われるイギリスのユニークな自転車で、世界中に愛好家がいるこれまた名品です。で、時計も蘊蓄のある高級品から数千円のデジタル物までが一緒に紙箱に…、確かにこれは怪しいオヤジかもです。いいヤツは専用のケースがあるんですよ。でも片手では出し入れできないでしょ。だからドバッと紙箱へってことになってるんです。ボクは威張る気などさらっさらないんですが、若者たちには確かに嫌味っぽいかもですです……。
「威張ってるオヤジの方がわかりやすいんです。ふんぞり返ってる方が、明らかに違う人種なんだと納得できるんですよ。今どきの若い奴らは同類であることが一番大事なんです。アイツらに背伸びは、ダサいってことになるんです。だからなんでも身分相応、身の丈をよ~く知ってるっていうか、要するに“ゆとり世代”に夢はないんです!! 寂しい奴らですよ」って社会学の授業のような説明をしてくれた彼も、ボクと比べるとかなり若者ですがね…。

バブル真っただ中でフリーランスエディターとして世界中を飛び回り、面白いもの・ことを探し、世界中の美味しいものを食べ、圧倒的な風景の中に身を置く。確かにそんな時代があった。ただこれだけは自慢しておきたい。Good Luckが続くための努力、それは誰にも負けなかったこと…『普通がイチバン』『安定がイチバン』と語る今どきの君らに伝えておきたい!! 『普通がイチバン嫌』で頑張ってたオジさんがいたことを!! な~んてね。

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