COLUMNCOLUMNグーフィ森の『Single Speaker』

Single Speaker Vol.52 『極私的プロファイルVol.4』 

2018-04-14

いきなりブッ飛んだスタートとなった調理師学校でありましたが、なにせ中卒組やら歳の離れたヤツらとの学生生活ですから‥色々あります。ですが、今思うと可愛いものです‥‥!?
入学3日目にして“おっちゃん”という呼び名(あだ名)は学校中に広まっておりました。誰もがボクをおっちゃんと呼びます。女の子までもが…アッ、そうそう。クラス47いや48人だったかな、で、女子が14・5人います。給食センター上がりの脱サラおばちゃん以外はすべて高卒組の乙女たちです。その乙女たちからも“おっちゃん”と親しげに呼ばれます。親しげなのは良いんですが、“おっちゃん”ですから…なんともねぇ~。宇治ボンとカメバン(このあだな決定)が広めたに決まってます!! 2人はすでにこのクラスを掌握してるらしく、、、「おっちゃん、メシ行こ!」はいはい、行きましょ行きましょ。おっちゃんは何処へでもお伴しますよ~。結局のところ、カメバンが表で宇治ボンが裏番(裏の番長)。でもってその上、まッ、名誉職みたいなものが私おっちゃんらしいのです!? こんな妙な図式がいつの間にやらです。ったく、よくわかりません??

入学4日目の実習の時間に小さな事件です。この日の実習は包丁研ぎでした。「ほな誰かにやってもらおうかなぁ。ほんなら“おっちゃん”アッちゃうちゃう、森君やってみてくれへん」タハ~ッ、担任までおっちゃんですかぁ!?。
で、小さな事件はもう1つ、この日に実習の班の発表があったんですが、なんとなんとボクはカメバンと一緒です。「おっちゃん!! よろしゅう」なんか違うな~。なんか違う。おっちゃんはそんな思いを抱きながら調理師学校生活はスタートします‥‥。

学校は想像していたものとかなり違いました。きっと高校の延長線上にあると思ってたんですが、“将来は板前で!!”と腹を括ったヤツらはちょっと違いました。年齢も性別も分け隔たりなく付き合ってくれる実にいいヤツばかりで、しかもみんないたって真面目に授業に取り組むんです。クラスの9割が10代ですから、もっともっとイケイケなチャランポランばかりだと決めつけていた自分がちょっと照れ臭かったことを今思い出します。
がしかし、そんな学校の良き空気を乱している“3人組”がいるのです。そうです。カメバン、宇治ボン、おっちゃんです!? この3人、クラスで思いっきり浮いてました。浮いてるというより、ある意味次元の違う世界の中に3人はいました。だってヤンキーにバーテンダーそしてヒッピー崩れ(この頃は髪もヒゲも伸ばしてましたから)ですよ、どう考えたって普通じゃない!? で、3人衆はほぼ毎日、授業終わりで学校裏の玉突き屋で集合となっていたんです。 それが悲惨な事件へ3人衆を向かわせることになるんです。馴染みの玉突き屋は、いつも入口横の卓が3人の定位置でした。そう、おかみさんがレフリー(審判)を務めてくれる常連客羨望の卓です。いつものように3人が打っておりますとそこへ「誰かええ相手いてへん?」とおかみさんに声を掛けながら入ってくる4人組、いかにもな感じなので、面倒臭いことになりたくないやとゲームを閉めようとした時「おっちゃん、どう?」とおかみさん。「エーッ!!」いつもはおっちゃんなんて呼びもしないのに、、、「ほなおっちゃんやりまひょか?」な、なんでやねん!? しかし断るのも面倒なことになりそうなので、渋々ゲームに参加すると、これがまた驚きの展開に、、、ゲームはボクのブレークで始まりました。ブレークは得意ではなかったのですがこの日は絶好調。ブレークで2つもインしてしまい。なんと1打目で3イン。滅多にないことに“渋々のゲーム”をしていることもあっさり忘れ「いやいやいや、こりゃぁえぇ調子えぇ調子、、、」「おっちゃん、えぇやんえぇやん」ボンとバン(?)のコンビもガンガン煽ります。お相手もなかなかな腕前で、1打目は3イン。こりゃいい勝負だ。この流れにのってしまったボクも今思うとバカでした。「こりゃいけるいける」と第2打へ突入。これからがもう信じられないようなミラクルショットの連続、あっさりとTake3(3個玉が入ったってことです)。「こりゃぁ突き切っちゃうかも !!?」なんてニタニタしながらハスラーしてます、と、ボンとバンが煽る煽る「おっちゃん、ちょっと手加減してあげたほうがよろしんちゃいます!?」“バカヤロー、やめとけ、やめとけ、ろくなことに”と言おうとしたとき、ボクの両脇をオッサンの連れが二人掛かりで、と、カメバンが「なにすんねん!!」この展開絶対アウトです。最悪な展開です。案の定4人と3人は店の外へ、、、カメバンがボクの両脇を捕まえてた2人を離してくれたのはいいんですが、パンチが2発入っちゃってます。やれやれ、始まっちゃいますよね、これ。始まっちゃいますよね。ボクは基本的に喧嘩は大嫌いです。が、激しい取っ組み合いは大好物(?)でした、あの頃はね。 だからタチが悪いんです。事を丸く収めようって気がこれっぽっちもないですから。だから当然の展開になっちゃうんですよ。しかしカメバン、手ぇ早ぇ~!? しかもえらく喧嘩慣れしてます。アッという間に3人を潰しちゃいました。えっ、ボクですか~? ボクは玉ついてたお相手と激しく(?)ですです。宇治ボンですかぁ。いやぁビックりしましたびっくりしました。口だけ参戦なんですが、その口だけ参戦(?)が凄かった。まさに口先の機関銃とはあの事。「ボケッ、誰に断ってんのや、アンッ。おっちゃんとの勝負するなんざ300年早いっちゅうねん!!」よ、よくわかりませんが、立て板に水状態(?)。ある意味すご腕です。ま、そんなこんなで、おかみさんが「おまわりさん呼びましたでぇ、学校にも連絡しました」「エーッ!!」ものの1・2分ですよ。で、ウ~!! 7人のやんちゃ衆が店に戻るとおまわりさんが4名飛び込んできました。おまわりさんと目が合うと「アッ、またお前ら!!」そうです。集団包丁振り回し事件!? のときのオマワリです。で、こっぴどく絞られてるところへ担任到着。「森くん、、、」これでボクのポジションは決定的です。伝統ある学校の厄介ものです。このビリヤード場事件以降、何かと学校からマークされる要注意人物となってしまいました。その分きっちり学べたような気もしているんですが、どうなんでしょう!?

こんなマンガのような展開が1年あれやこれやと続きます。この2人とつるんでいると、とにかくなんでもかんでもマンガのような展開になってしまうんです!? めんどいなぁ、と思いながらも、ふたりともかわいいヤツらなんです。それに慕われている身としては悪い気はしないというもの。そしてこの2人、何より料理を学ぶことに真剣でした。そういう意味では、人生の選択を1年先伸ばしするためにこの学校を選んだボクなんかより、ずっとずっと真面目だと言えるかもしれません。歩む道を決めた男たちは時にちょっと羨ましいくらいカッコよく当時のボクの目には写っていたはずです。その意味でも、彼らと過ごした1年は本当に意義ある1年だったなと今思っています。

この後、極私的プロファイル最終章Vol.5へと続きます。

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