残りのふたつは福山雅治の楽曲です。なんたって18年間プロデュースさせてもらいました。中でもこの2曲は強烈なイメージで焼き付いています。
『IT'S ONLY LOVE』は1994年3月に発表した楽曲で、福山雅治初のオリコンチャート第1位、しかも4週連続です。そしてこの曲が初のミリオンヒット、まさに“初モノ”づくし。おそらくはボクの提案と福山の才能がうまく化学反応を起こしてくれたんでしょうね。ずいぶんと難産な作品でしたが、その後の福山の大躍進のきっかけになった1曲だと思っています。曲創り、アレンジャーの起用、PV製作…、苦労しましたが結果すべてがうまく運びました。この難産を乗り越えたことで福山を中心に各方面のクリエイターが集結し、“Team FUKUYAMA”が誕生しました。大きな一歩でした。
“初モノ”に関してはこの曲が一番です。この曲『Dear』は1994年の6月に発表されたアルバム『ON AND ON』に収録されている1曲です。ロサンゼルスで曲をいちから創り、レコーディング、トラックダウン、マスタリング、そしてジャケット撮影に至るまで、全てを海外で行ったという福山にとって記念すべき“初モノ”のアルバムでした。中でもこの『Dear』は大きなテーマに挑んだ大作です。今までの福山にはないバラードに仕上げようと、新しいアプローチにチャレンジしたのです。五木ひろしさんの『よこはま・たそがれ』を思い出してみてください。ワードが並んでいるだけという不思議な詞が展開されています。「♪よこはま たそがれ ホテルの小部屋…」ねっ、考えてみると不思議な詞でしょ。作詞を担当した山口洋子さんの非凡なる才能に驚くばかりです。これの福山雅治バージョンにチャレンジしてみようということになったんです。これまた難産でしたが、このコンセプトはハマりました。「♪真夜中の電話 雨のドライブ 喧嘩した…」ねっ、ドンピシャでしょ。このアルバムも見事オリコンチャート1位を獲得。発表して20年たった現在でも、ファンの間では根強い人気のある1曲です。そしてこの楽曲にはもうひとつの秘話があります。「ロッカバラードだからカッコイイ泣きのギターが欲しいよね」と、福山。そこでボクは「マイケル・トンプソンがいいんじゃない?」と提案。実はボクは当時、西海岸イチのセッションギタリストと呼ばれていた彼の大ファンだったのです。そこでサウンド・プロデューサーの小原礼氏が彼にオファーをおくってくれたのです。夢は叶いました。福山、小原氏、そしてボク、3人が納得する素晴らしい楽曲に仕上がりました。もしかするとこの楽曲がセレクトした3曲の中でも最も思い入れのある楽曲なのかもしれません。