なんてったって右も左も人人人、人の洪水です。毎日30万人を超える人が訪れていたんですからね。日本海沿いに点在するいくつかの町々を合わせてやっとこさ2万人に満たない田舎町から出てきた少年3人組ですから、そりゃぁもうテンパってるわけです。こんな人の洪水なんか見たことないんですからね。
キョロキョロしながら歩いていた友達が外国の方に軽く接触、と、「Oh~,Sorry!! Are you OK?」なんて言われようものなら、田舎者は突如崩壊です。ヘラヘラしながら唯一知ってる精一杯の英語で「あぁ~Thank you very much !」ってなんか噛み合ってないですが、友達が当たった髭面のオジさんはニコニコ笑って彼の頭をなでてくれたんです。これもう大事件です。「やったぁ!! 通じた。外人と話せた!!」田舎少年3人組は、パニックもパニック。パニクることこそが、『人類の進歩と調和』だったのです!? あの頃の田舎者3羽烏にとってはね。だって3人とも外国人と会話したのはこの時が生まれて初めてのことですから。インバウンドなんて言葉はまだ日本には存在していなかった時代のことですからね。3人の心中(バクバク)をお察しくださいませ。
だから3人組も必死です。丹後代表派遣団(!?)として1つでも多くのスタンプを押さなければと猛チャージです。パビリオンに入るや否やスタンプの所へ直行です。スタンプを押すとすぐさま次のパビリオンへ走る走る。このときボクらの『人類の進歩と調和』はとにかく走ることだったようです!? 展示なんかろくに見ちゃいません。何が目的なんだか…今思うと随分もったいないことをしていたなと遠い昔を振り返って思いますが、あの頃は会場を走り回っているだけでいっぱいいっぱいだったのです。そして人の洪水に酔うことに大興奮できていたのです。そして世界にはこんなにもたくさんの国があるんだと実感したんです。スタンプがたくさんたまりましたからね(!?)。念願の月の石も、意外に(失礼)かっこよかったソビエトのソユーズ宇宙船も、SANYOパビリオンの自動人間洗濯機も、電々公社(現NTT)パビリオンの無線電話機(現在の携帯電話のプロトタイプ)も、動く歩道も、もう見るもの聞くもの全てが驚愕ものばかりでしたが、なによりボクの心に刺さったのは、アメリカ館のそばで生まれて初めて食した『ハンバーガー』というアメリカの食べ物。もう完全にノックアウトされたのでした。「こんなうまい食べ物がアメリカにはあるんだ。やっぱアメリカスゲーッ!!」ってなったんです。そして最初にバーガーを食べたとき、『ルートビア』なる未知なる飲み物に人生初遭遇しまして、当然初体験を試みます。これまたショッキングでした。コーラに限りなく近い飲み物に見えたのですが、一口飲んで「ゲェーッ! なんだこりゃ!?」その独特の味に「なんか薬っぽい!?」で、よくわかりませんが「こんなもの飲むアメリカ人はやっぱスゲーッ!!」ってなったんです!? このハンバーガー&ルートビアショックは、さんざん会場を駆け回って見てきたもの、そう『月の石』をもブチ抜いて、“Best of Expo’70”となったのでした!? なんたって2泊3日、3回の会場入りで5回もバーガーを食べ「エーッ、ダメだこりゃぁ」ってあれほど言っていた『ルートビア』も結局3度もチャレンジしたのであります。やはり“Best of Expo’70”なのです。